すうぷ屋 新宿店
具沢山、食べるすうぷのレストラン【 すうぷ屋新宿店 】WEBサイトが2007年6月、ブログとなってリニューアル!
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ジェフ・ニコルスン『食物連鎖』より
最初のコースが出た。スープという平凡なものが最初に出たのは、はたして幸運なことかどうか、ヴァージルにはわからなかった。とりあえず、スプーン一杯分を口に入れて見る。その風味はかなり非凡なものだった。舌に溝が掘られ、いくつかの味覚の領分ができて、たがいに小競り合いを繰り返しているような感じ。甘味、塩味、酸味、木の実の香り、さくらんぼの味。レヴァーの風味もほのかに感じられる。これは相当に無気味な組み合わせで、ヴァージルの意見では成功した料理とはいえなかったが、決して食べられないものではない。ロサンゼルスにあるヴァージルのレストランで料理長をつとめているレオなら、きっと興味を示すだろう。この味を忘れないようにして、レオへの土産話にしよう。もう一度スプーンを入れると、スープ皿の底に沈んでいた固形物を掬いとる結果になった。見ると、ねずの木の実があり、幾筋かのサフランがある。棕櫚の葉に似た見馴れない野菜もあったが、これはたぶん海草の一種だろう。乾燥いちじくを薄切りにしたものも入っていた。ヴァージルは、ワインを口に含んでそれを呑み下した。商店の店先にたむろする浮浪者のように、スープの味は口のまわりにしつこく残っていた。続けさまにワインを呑んで、ようやくその後味は消えたが、今度はエルダーフラワーの味がいつまでも口に残った。
(宮脇孝雄訳・早川書房刊)
最初のコースが出た。スープという平凡なものが最初に出たのは、はたして幸運なことかどうか、ヴァージルにはわからなかった。とりあえず、スプーン一杯分を口に入れて見る。その風味はかなり非凡なものだった。舌に溝が掘られ、いくつかの味覚の領分ができて、たがいに小競り合いを繰り返しているような感じ。甘味、塩味、酸味、木の実の香り、さくらんぼの味。レヴァーの風味もほのかに感じられる。これは相当に無気味な組み合わせで、ヴァージルの意見では成功した料理とはいえなかったが、決して食べられないものではない。ロサンゼルスにあるヴァージルのレストランで料理長をつとめているレオなら、きっと興味を示すだろう。この味を忘れないようにして、レオへの土産話にしよう。もう一度スプーンを入れると、スープ皿の底に沈んでいた固形物を掬いとる結果になった。見ると、ねずの木の実があり、幾筋かのサフランがある。棕櫚の葉に似た見馴れない野菜もあったが、これはたぶん海草の一種だろう。乾燥いちじくを薄切りにしたものも入っていた。ヴァージルは、ワインを口に含んでそれを呑み下した。商店の店先にたむろする浮浪者のように、スープの味は口のまわりにしつこく残っていた。続けさまにワインを呑んで、ようやくその後味は消えたが、今度はエルダーフラワーの味がいつまでも口に残った。
(宮脇孝雄訳・早川書房刊)
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