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すうぷ屋  新宿店
具沢山、食べるすうぷのレストラン【 すうぷ屋新宿店 】WEBサイトが2007年6月、ブログとなってリニューアル!
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ロザムンド・ピルチャー『九月に』(上)より

当時は住み込みのコックとして、ミセス・ハリスがキッチンに君臨していた。彼女はすばらしいコックだったが、衛生面に関する愚かしい偏見についぞ悩まされたことが無かった。アーガ・クッカーの上に彼女はいつも黒い鉄製の、スープ・ストックの大鍋をデンと据えており、肉がまだついている骨とか、残り物の野菜とかが、しょっちゅうグツグツ煮えていた。このスープを土台にして、ミセス・ハリスは名代のスープをこしらえた。
ある年、狩猟のためにやってきたお客を迎えてのハウス・パーティーの折、外はひどい悪天候で、アーガ・クッカーの上方の棚には雨水のしみこんだジャケットや、ニッカボッカーや、スウェーターや、毛のぽやぽやした靴下などが常時ぶら下がっていた。 その二週間の間に、スープは日を追って味がよくなり、こたえられぬ風味を備えるようになった。
お客はレシピーをと乞うた。
「まあ、ミセス・ハリス、なんて’こく’のあるスープでしょう!つくり方をぜひ教えてくださいな」
しかしミセス・ハリスはただ胸を張って、「ちょっとしたコツでして」と答えるばかりだった。 その週が終わって、パーティーの客はミセス・ハリスのふくれた赤い手に過分の祝儀を握らせて帰って行った。
お客が帰ったのち、スープストックの鍋も用ずみとなって、洗うためにようやくからにされたが、なんとその底に、あまり清潔ともいえぬ狩猟用ストッキングの片方の、半ばフェルト化したものが発見されたのだった。

(中村妙子訳  朔北社1997年)


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すべては一枚のダンス・パーティーへの招待状から始まった−。
英国・スコットランドの高地地方に暮らす地主の一族と、彼らをとりまく古くからの友人たち。 美しく深まる秋、スコットランドの自然を背景に、ゆれる人間模様、家族の崩壊の危機と再生を描く。

(この本は本サイトをごらんいただいた方からの投稿でお教えいただきました。
ありがとうございました。)


これからも世界各国のスープ、スープの歴史、といった読み物も紹介していけたらなぁ、と思います。
「こんな作品にもこんなスープが登場するよ」とご存知の皆さまはどうぞすうぷ屋までメールでお知らせ下さい。紹介者名入りで、当ページに掲載させていただきます。
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